堤寛教授のお勧め、エコプラント

エコプラントについて

数年前、イタリアでの学会参加の折りに、一山がそっくり石の町並みになっている世界遺産の街、アッシジに足を伸ばした。山頂に位置する聖フランチェスコ聖堂は美しい教会だった。地下に、聖フランチェスコの墓が祀られていた。墓の周囲を飾っていたのが、白い花が可憐なスパティフィラム“だった。たまたました宿泊した市内のホテルのフロントにもスパティフィラムが飾られていた。スパティフィラムは、知る人ぞ知る「エコプラント」の代表格である。長年の経験に基づく、優れた匂い除去の仕組みだ。

エコプラントとは、室内の空気をきれいにする働きをもつ植物を指す。観葉植物、インテリアとしてだけでなく、空気を浄化してくれる、そんな優れもの植物である。もともと、植物による室内の空気浄化作用を科学的に証明したのは、宇宙船の生活環境システムを開発・研究したアメリカ航空宇宙局(NASA)だった。

19697月、アポロ11号が月面着陸に成功し、NASAは月面基地の建設を計画した。重要課題の一つが完全な密閉空間での生命維持システムの開発だった。B.C.ウォルバートンらは、バイオホームと名づけた密閉空間を利用して空気浄化の研究を続けた。そして、弱い光でも発育する観葉植物が、合成資材から発生する300種もの揮発性有機化学物質(VOC)をみごとに浄化することを示した。空気中の有害物質は、葉の気孔から取り入れられ、30%が葉で吸収される。残りの70%は根に運ばれ、根に共生する微生物によって分解される。1984年、空気浄化力の特に強い植物50種をエコプラントとして発表された(https://spinoff.nasa.gov/Spinoff2007/ps_3.html)。ウォルバートの著書は翻訳・出版されている。「エコプラント.室内の空気をきれいにする植物」(主婦の友社、1998

建材、内装材や多くの家具には、天然木の代わりに合成建材が使われている。それらを加工するための接着剤・塗料にもさまざまな揮発性有機化学物質が含まれる。その代表が、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、ベンゼンで、シックハウス症候群の原因となることが知られている。いわゆる形状記憶シャツにはホルムアルデヒド処理がなされている。新生児用の肌着には、ホルムアルデヒド非使用が明記されている。

エコプラントには身近な観葉植物があげられる。上に紹介したスパティフィラムやシダ類(タマシダなど)が代表だが、ベンジャミンゴムノキ、インドゴムノキ、オリヅルラン、ドラセナ・フラグランス(幸福の木)、アグラオネマ・モデスタム、ディフェンバキア、アロマティカス、カンノンチク、アレカヤシ、ポトス、胡蝶ラン、シンゴニウム、ワーネッキー、アロエやサンセベリアなどなど。

藤田保健衛生大学病院内ではドトールコーヒー店が営業している。オープンスペースのコーナーのまわりに、たくさんのエコプラントが置かれている。街中のコーヒー店と異なり、廊下にコーヒーの香りが漂わないように工夫されている。コーヒーが苦手な患者さんに対する配慮である。たしかに、コーヒーの香りはエコプラントによって遮断されている。

病理診断部門で積極的にエコプラントを利用しようとするときの悩みは、作業動線の妨げになるために、どうしても棚や台の上に小ぶりの植物を置かざるを得ないこと。ホルマリンは空気より重いため、床の近くによどみやすい---。シダ類は小さくて管理が容易だが、葉が枯れて掃除が大変なのがちょっと面倒。スパティフィラムは根腐れにだけ気をつければ、丈夫で育てやすいのでお奨め。実践者の一人である青木潤氏(現、福山臨床検査センター、細胞・病理)曰く、サンセベリアを一鉢置くだけで、リフォームした部屋から接着剤の臭いがなくなった。

エコプラント。みなさん、ぜひお見知りおきを。そして、環境に優しい医療・病院業務を実践しましょう。一鉢のエコプラントをまず病理診断室の空いたスペースに置いてみよう。見た目に優しい観葉植物たちがどの程度の実力の持ち主か、わざわざホルマリン濃度の測定をしなくても、きっとまもなく実感できるでしょう。

 

 

あいち健康の森公園 交流センター        

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wellbeing program 第47回「輪の和」コンサート
♪ 14:00:お話: トーク形式でわかりやすく説明。エコプラントについて。エコプラント展示協力は、東知多フラワーガーデン戸田和光氏ご夫妻。♪ 14:30:Oboeライブ:日本のうたを演奏。そのあとで、病理診断について知っておくとよい話も。♪ 15:00:みんなで歌おう。夕焼け小焼け、赤とんぼを歌った。♪ 15:30:おしゃべり、お茶、スナックつきで。和やかで楽しいひとときでした。あいち健康の森公園所長佐々木克氏もご来場くださいました。感謝。
11月23日健森公園.pdf
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